1本の歯を守って口腔全体を読み解く|

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1本の歯を守って口腔全体を読み解く

1本の歯を守って口腔全体を読み解く|

2026年7月19日

当院のホームページでは、
「1本の歯を守り、口腔全体を読み解く」
という言葉を掲げています。
これは見栄えのためのキャッチコピーではありません。
開業以来、私が教えを受け最も大切にしてきた診療の考え方であり、これからも変わることのない当院の永久コンセプトです。
歯科治療というと、多くの方は「痛い歯を治すこと」を思い浮かべるでしょう。
もちろん痛みを取り除くことは大切です。
しかし、**「なぜその歯が悪くなったのか」**という原因まで考えなければ、同じ問題を繰り返してしまうことがあります。


一本の歯は一本だけで働いているわけではありません。
かみ合わせ、周囲の歯、顎の動き、噛む力…。
すべてが互いに影響し合っています。
だからこそ、私たちは一本の歯を治療すると同時に、口腔全体を診ることを大切にしています。
今回は、その考え方を象徴する症例をご紹介します。

全体のレントゲン(パノラマ写真)術前、術後です。一見違いは1本右下(術者から患者さまを診た方向のレントゲンなので逆に写ります)を治療した違いにしか見えませんが、厳密なかみ合わせ診査診断後、全歯のかみ合わせ調節をしています。

症例紹介
40代女性。
「右下の奥歯が痛い。」
それに加えて、
「長年、どこで噛んでいいのかわからない。」
という悩みを抱えて来院されました。
歯並びは比較的きれいで、過去の治療も多くありません。
一見すると、大きな問題はないようにも見えます。
しかし詳しく診査すると、右下の奥歯には古い詰め物の下で虫歯が進行し、歯にはヒビが入っていました。
さらに歯髄は壊死しており、根管治療が必要な状態でした。
ここまでは珍しい症例ではありません。
しかし、さらにかみ合わせを診査すると、大きな問題が見えてきました。
痛みのある歯だけに、強い力が集中していたのです。
ヒビの方向も、その力が加わる方向と一致していました。
つまり、
歯が悪くなった原因は虫歯だけではなく、かみ合わせにもあったということです。

歯だけ治しても、原因は残ります
もちろん、まず優先したのは痛みを止めることです。
感染した神経を取り除き、根管治療を行いました。
しかし、それだけで治療を終えてしまうとどうなるでしょうか。
かみ合わせが変わらないままであれば、
同じ歯に再び過剰な力が加わります。
せっかく時間をかけて治療した歯でも、
再びヒビが入ったり、
被せ物が壊れたり、
別の歯に負担が移ってしまう可能性があります。
そこで患者さまにも十分ご説明し、ご理解いただいたうえで、
咬合器を用いた精密な診査を行いました。
生体に自然な本来の顎関節の位置でかみ合った瞬間の
理想的なかみ合わせと、現在の調子の悪いかみ合わせとの違いを分析した結果、
現在のかみ合わせは大きくずれていることが分かりました。

診査結果をもとにシミュレーションを行い、
奥歯全体を計画的に調整して、力のバランスを整えていきました。1回1時間の調整を数回は行いました。

そうして長年の不快症状は非常に改善され、とても噛みやすくなったことを喜んでいただきました。
症状があり根管治療をおこなった歯はしばらくプラスチックの仮の歯だったのですが、最終的には噛み合わせにやさしい材料で修復を行いました。現在は症状も落ち着き、
長年感じていた「どこで噛めばいいか分からない」という違和感も大きく改善しています。ご自身でも指摘されるまで気づかなかったかみ合わせの「音」が著しく良くなったことを体感していただきました。

一本の歯を守るために
この症例は、
虫歯の治療でも、
根管治療の症例でもありません。
1本の歯を守るためには、口腔全体を見る必要がある。
そのことを教えてくれる症例です。
歯は一本ずつ存在していますが、
実際にはすべての歯が互いに支え合っています。
一本だけを見ていては、本当の原因が見えないことがあります。
だから私たちは、
痛い歯だけではなく、
口腔全体を読み解き、
その歯が長く機能し続けられる環境まで整えることを目標に診療しています。
それが、当院の掲げる
「1本の歯を守り、口腔全体を読み解く」
という言葉に込めた思いです。

この記事が当院を受診される患者さまの参考になれば幸いです。

歯科すやま 陶山公一




















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